当院は循環器内科なので 血圧に関する相談の患者様は多いと思います。
総合病院や大学病院から病状が落ち着いたので町医者にという流れでいらした方は
そもそも治療方針が決まっていたり 御本人もご家族も治療の必要性をご理解して
頂いている方がほとんどなので あまりお聞きしないお言葉なのですが
健診で高血圧と指摘されたり、他科でたまたま計測した血圧が高くて
受診をすすめられたりした方の中には『血圧の薬は飲み始めたらやめられないんですよね』
とおっしゃられる方が時々いらっしゃいます。
咳や鼻水はかぜ薬、胃もたれには胃腸薬、便秘には緩下剤のように何かある症状に
対して飲むのが薬で、おさまったらやめられるという感覚のものだと思います。
高血圧は遺伝的体質やホルモン異常、生活習慣(塩分過多・肥満・年齢による
血管の硬化等)で自覚症状なく生じている事が多いので 薬をのんだら劇的に変化を
感じることはなく、むしろ必要性(楽になりたい症状)が無いのに副作用があるかも
しれないものを飲まされるという受け取りになるのかなと思います。やめられない?
とおっしゃる方の思いはワンパターンではないと思いますが 利益より害悪が心配なの
かなと感じます。
医療者側が害悪として治療をすすめるのは高血圧を放置した場合の心筋梗塞や脳出血
その後の生活の質の低下です。それこそ飲みたくもない薬を絶対飲まないと延命はできま
せん。半身不随で自由に動けなくなり、血液サラサラの薬も必須で様々な治療に
難儀します。
タバコと肺がんでも取り上げられがちですが、100%癌になるか?と言われれば
もちろんそうではないし、高血圧を放置しても元気で天寿を全うされる方もいらっしゃる
でしょう。確率の話・人生観の話にはなりますが、悪くなってから後悔する方を本当に
多く見てきた医療者側としては禁煙や降圧剤をすすめずして何をするといった立場です。
生活習慣が原因と思われる場合、ダイエットや運動・減塩を頑張ったとしても降圧しな
ければ、服用を前向きにお考えになられた方がよろしいかと存じます。
実際、ダイエットでお痩せになって薬がいらなくなる方もいらっしゃいますが、普通は
やめられなくなるのではなく、やめてはいけない体の状態が継続しているという状況です。
まとめるとすると、血圧の薬を飲み始めた方は 一生飲む必要がある状態が続くことが
多く、副作用(ほてり、ふらつき、肝障害他)が出る場合もありうる。確率的に生活の状況が
一変するおそれがあるので 痛くも痒くもないのに薬はすすめられるが 飲む飲まないは
自分で判断するということです。
一時的に高いからとすぐ服用して!とは なりません。危険な値(180~200以上)
では無い限り自宅での血圧を一定期間計測していただき、診療や健診で緊張したから
上がってないか、ホルモン系の異常はないか 色々確認してからの処方となります。
降圧剤や高コレステロールの薬は現代人の元気で長生きの毎日掛け捨ての保険的な
感じしょうか。自由に動けなくなってから毎日飲まされるよりは 元気でいるために
血圧の計測と服用をコツコツ続けていく方をおすすめいたします。診察時に内容の
変更や減量を随時行って参ります。